雨上がり

雨上がりの庭
遠くで雷が鳴ってる
ぼんやり庭を眺める
母が作った小さな中庭
母と暮らした頃、家で介護してた年月
当時の日記を読んで泣く
早朝から周辺症状に振り回された日の日記
介護ベッドの横で眠る私
入歯を投げつけられ起こされた朝
母をベッドから車椅子に起床させ
台所に連れていく
一口パンを食べては直ぐ寝させてと言う
それを4回も5回も繰り返す
前夜も相当悩まされたあげくの朝
私は遂に大声で怒鳴る
怒鳴った自分の声にエスカレートして
さらに叫ぶ私に
驚いて泣く母
そんな風に母を泣かせた自分が情けなく
さらに泣く私
茫然としてる2人しかいない家に
デイサービスのお迎えが
諸々察っして「お手伝いします」
と家に上がって着替えの仕上げを
黙って手早く手伝ってくれる
普通の人と接して涙がこみ上げる

だが、翌日の朝は実に普通の人になって
ショートステイのお迎えに
「迎えに来てよ」とポツリと言いながら
素直に乗って行く母
その母の小さい姿に一人泣く

そんな日の様子が綴られて
もう忘れてしまえばいいのか
それでも、そんなに辛い事でも
それが認知症を生ききた母との
想い出だ
誰にも話せない
でもここにぶちまけてきた
母と私の想い出だ

今はもう施設に居て静かに日々を過ごして
でも、きっと家に帰りたい思いがあるはずだ
それを口にしなくなり
いろんな言葉を口にしなくなって
頑張ってくれている

施設の計らいで特別に面会させて貰ってる
今日も行ってきた
こんなに大人しくなって、、、
さらに小さくなって、、、
随分と楽をしている私は
雨上がりの庭に出て独り言

「お母さん、今年もパイナップルリリー咲いたね」
「庭梅の実はもうちょっとしかないね」
「今年から植えた蓮、咲いて欲しいね」
「お母さん、ほんとは施設に入れた私のこと怒ってる?」
返事はない、、、
明日も施設に会いに行こう